三重県認可の専門学校 厚生労働大臣指定の養成施設

伊勢リハ☆ブログ

日本人の骨格

体のことを聞きました
今月も残すところあと少し。
もうすぐ新年度が始まりますね。
7月にスタートした、この体シリーズも13回目となりました。

さて、今回は、日本人の体格について気になっていたことを林先生にうかがいました。


ー以前、欧米人のように背骨が湾曲していないから日本人はTシャツが似合いにくいという記事を読んだことがあります。
どういうことですか?日本人だって真っ直ぐなわけではないと思うのですが、そんなに違いがあるのでしょうか。


ヒトの背骨は、前からみると直線ですが、横から見るとS字のように前と後ろへ弯曲(わんきょく;カーブ)しています(図1)。


図1 クリックで拡大できます

欧米人は日本人よりその弯曲が強く、後ろへそり返っています。欧米人のモデルさんは、ミロのヴィーナスのように背筋がスラッと伸び、背も高く見えますね(図2)。
これには、欧米人が昔から狩猟中心の民族だったからではとの説があります。
一方、日本人は大昔に狩猟から農耕へとライフスタイルが変化し、畳での生活が中心だったことから、背骨がCの字のように後ろに出っ張り背中は丸く見えます。
背中の丸い日本人はTシャツを着ると、ダボダボになりやすいですが、背筋がスラッと伸びていると、Tシャツがボディラインにフィットし似合って見えるのではないでしょうか。
日本人も背筋を伸ばしていたほうが、Tシャツも似合って見えますね。

図2 ミロのヴィーナス



ー欧米人と比べて骨格が違うとは思っていましたが、他にも特徴的な差異はありますか?
骨格が違えば筋肉の付き方も違ってくるのかなと思うのですが。

欧米人と日本人では、骨格が違いますから、おっしゃる通り筋肉の付き方にもいくつかの違いが出てきます。
欧米人は、背筋(はいきん)や太ももの裏側の筋肉が発達しやすいです。
これには、先ほど説明しました背骨の形とも深いかかわりがあります。

骨格は、関節で骨どうしが連結しているので、一か所の骨の形が変わると、他の骨や筋肉に影響を与えます。
欧米人の背骨では、腰椎(ようつい)が前に強くカーブするのですが、下につながる骨盤(こつばん)も前に倒れます。
それにより、お尻が後ろに突き出たような姿勢になります(図3)。



図3

このような姿勢を取ると、背筋や太ももの裏側の筋肉が引き伸ばされ、立つ、歩くなどの動作の場面で強い力が加わり、筋肉が発達しやすくなります(図4)。

背中をそり返らせ、お尻を後ろに突き出すような姿勢をまねして頂くと、背筋(はいきん)や太ももの裏側の筋肉に力が入るのがおわかりいただけます。



図4


ー日本人でも、昔に比べたら顔が小さくて手脚が長い若者が増えたような気がしますし、「最近の子は脚が長いね~」といったことも聞きます。
正座しなくなったから脚が真っ直ぐ長くなったという説も聞きますが、生活様式の変化だけで劇的に骨格が変わるとは思えないのです。
昔より子ども(若者)の総数が少ないから、単にスタイルの良い子の割合が増えただけなのかとも思うのですが…。どう思われますか?

確かに、最近手脚の長い人が多いですね。
日本人の身長についてみると、昔から高くなり続けてきたのではなく、
鎌倉から明治時代までの人の身長と比べて、昭和から平成時代の人々の身長が高くなってきたようです。


クリックで拡大できます

狩猟採集が中心であった古墳・縄文時代には、鎌倉時代から明治時代よりも身長が高かったと言われています。
これには、動物性タンパク質の摂取量が関係しているようです。
狩猟採集で肉や魚など動物性たんぱく質が主食であった大昔から、農業の発達で米が主食に変わったことで、
身長が小さくなり、そして再び食生活の欧米化が進んだ現代において、身長が急速に伸びたのではないでしょうか。


昭和23年平成19年
平均身長(cm)男性 161
女性 150
男性 171
女性 161
動物性タンパク質摂取量(g)17.837.8


最近では、運動を中心とした理学療法の場面でも食事や栄養に注目されています。
タンパク質摂取量が不足した低栄養状態で運動をすると身体機能の改善が不十分なだけでなく、
機能悪化を招くこともあるため、特に高齢者に理学療法を行うときは、栄養についても考えることが大切になります。

ーありがとうございます。



(参考文献)
・「基礎運動学 第6版 補訂」中村 隆一 著
・「筋骨格系のキネシオロジー原著第2版」Donald A Neumann著
・国民栄養調査 厚生省(昭和23年)、国民健康栄養調査 厚生労働省(平成19年) 
・「予防理学療法学 要論」大渕 修一 監修