三重県認可の専門学校 厚生労働大臣指定の養成施設

伊勢リハ☆ブログ

肩こりを知る

体のことを聞きました
みなさん、こんにちは。
今回の体シリーズは、悩んでいる人が多いと思われる「肩こり」です。


ーそもそも肩こりって、どういう状態のことを指すのですか

肩こりは「後頭部から肩、肩甲部にかけての筋肉の緊張を中心とする不快感、
違和感、鈍痛などの症状、愁訴」と定義されています。
症状としては「重苦しい、固くなっている、重だるい、こわばっている、痛い感じ」などがあげられます。

厚生労働省による国民生活基礎調査(2016年度)によれば、
肩こりは、男性が訴える症状の第2位、女性の訴える症状では第1位です。
この傾向は以前から変わらないといわれています。
日本人の多くが悩まされるこの肩こりですが、
肩こりが原因で病院受診をする方は、男女とも全体の30%といわれています。
腰痛が病院への通院率の第5位となっていますので、
肩こりがあるから病院へいくという方は少ないのかもしれません。

ちなみに通院率のトップ3は、1位が高血圧、2位が糖尿病、3位が歯の病気となっています。
肩こりの症状を改善するために病院受診される方は少ないため、
身近な症状にもかかわらずその病態や予防法、
治療法などは未知数な部分が多いといわれています。


ー原因は何でしょう?

肩こりには原因となる器質的病変(身体のどこかに損傷が認められるもの)がなく
神経症状も明らかでないもの、これを原発性(本態性)の肩こりといいます。
その他、症候性疾患(頸椎や肩関節などに疾患が認められる整形外科疾患、
心臓などに起因する内臓器疾患、眼科、耳鼻科、歯科疾患)に起因するもの、
心因性のものにわけられます。

この中でも、生命予後に大きく関わる可能性が高いものとして、
心筋梗塞を含む心疾患や、腹腔内出血などがあります。
とくに、高齢、女性、糖尿病、心不全の既往、脳梗塞の既往などがある場合、
胸痛等の訴えがなく肩の痛みのみの症状が出ることがあります。



ー危険な肩こりがあるということなんですね!
私の周りでは、なで肩の人は概ね、肩こりを訴えているのですが、骨格や体形と関係ありますか?

「なで肩」の方は、僧帽筋(そうぼうきん)の上部線維の筋力が弱くて
筋肉が延長(長く伸びきってしまう状態)した状態で、両手の重さを常に支え続けています。
その結果、筋力が弱いながらも持続的に収縮を強いられて、肩こりが発生すると考えられています。
この場合、肩甲挙筋(けんこうきょきん)や菱形筋(りょうけいきん)という筋肉は
逆に短縮といって筋肉の長さが短くなっているのも特徴です。

「なで肩」とは異なる特徴的な肩に「すくめ肩(いかり肩)」とよばれるものがあります。
このケースの場合は、「なで肩」とは異なる筋肉が延長し、また異なる筋肉が短縮しています。
このように、理想的な姿勢から逸脱した状態がみられるとき、負担がかかる箇所があらわれてきます。
この原因が骨格・体格によるかは関係はあると思いますが、
普段の姿勢や生活環境や仕事環境でも大きく異なってくると思います。


ー肩こりがないという人もいると思うのですが、違いはあるのでしょうか?
それとも肩こりを感じていないだけなのでしょうか?

肩がこりやすい人と、こらない人の違いは明らかになっていないと思われます。
肩こりを感じていないという方は、症状がないわけですので、
病院受診に繋がらないわけです。原因の特定は難しいかもしれません。
原発性(本態性)の肩こりの方の原因は、いくつか考えられています。
不良姿勢、不適切な運動、過剰労働、精神的緊張、循環障害、加齢、寒冷などがあります。



福島県立大学の大谷先生が看護師を対象にしたアンケートを行った報告があります。
常に肩こりの自覚症状のある方は、自覚的な労働の大変さ、
頸椎や肩関節の他動運動(他人等に動かしてもらうこと)で何らかの症状が誘発される、
僧帽筋(肩から背中にかけての大きな筋肉)に筋の硬さがあることが判明したそうです。
肩は、「肩の荷を下ろす」、「肩の力を抜く」、「肩ひじ張らずに」など、
精神状態の表現に使用される部位でもあるので、
精神的なストレスとも密接に関わっていることが伺えます。


―「我が社の未来は君の肩にかかっているぞ!」なんて、まさに!という感じですね…。
では、年齢は関係ありますか?


男性では年齢が上がるとともに増加する傾向です。
女性の場合は、50~59歳がピークで、それ以降は低下していきます。
男女差で言えば女性の有症率が圧倒的に多くなっています。
若年者は骨の成長が、筋・腱の成長より急速なために生じる体の柔軟性低下や
不良姿勢による影響が多いようです。

働き盛りの年代では、仕事中の精神的緊張や不良姿勢の強制、
過度の運動などが原因で生じることが多いようです。
さらに、肩こり症状によって男性ではより身体機能的な影響が強く、
女性では心の健康に影響を与えやすいことが明らかになっています。


ー運動不足が原因ならわかるのですが、過度の運動も原因になるということに驚きです!
ひどい場合はQOLを低下させるでしょうし、肩こりを完全に予防できれば、
まさにノーベル賞ものなんじゃないかと感じました。



参考文献:
「CLINICIAN 44 : 495-498, 1997」伊藤 達雄 著
厚生労働省ホームページ:https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa16
「整形・災害外科 58:929-933, 2015」 東 秀律,志賀 隆 著
「整形・災害外科 58:851-858, 2015」 大谷 晃司,矢吹 省司 著
「理学療法のとらえかた―Clinical reasoning : 64-84, 2001」竹井 仁 著 奈良 勲(編)
「脊椎脊髄 18:1237-1246, 2005」竹井 仁