三重県認可の専門学校 厚生労働大臣指定の養成施設

伊勢リハ☆ブログ

身体と防災

体のことを聞きました
9月1日は防災の日です。
今夏は大阪府北部地震や、西日本豪雨などが起き、記録的猛暑は災害レベルとも言われました。
自然災害は対岸の火事ではありません。
例えば、沿岸部が多い三重県では、津波による甚大な被害が想定されています。
一刻も早く、海や川から遠くへ、少しでも高いところへ避難しなければなりません。
その際に「避難できる体力」も必要となるのではないかと考え、
防災を切り口として、お話をうかがいました。


―避難する際に坂道や階段を上る可能性も大いにあると思います。平地を歩く場合に比べて、使う筋肉や負荷のかかり方などが違うと思うのですが、いかがですか?

東海・東南海・南海地震では三重県各地にも甚大な被害が想定されています。
各自治体から発表されている予想震度や津波ハザードマップなどは確認した方がよいと思われます。
ちなみに本校周辺で予想される最大震度は6強、津波は伊勢市防災マップ(2017年度更新版)によると、0.5 m以下となっています。
また避難場所がどこにあるのかなども把握しておかなければなりません。
家屋からの避難、とくに地震の際は、家屋内で割れたガラスなどで足を怪我してしまうケースが多くあるといわれています。
枕元などに靴を置いておくのも良いといわれていますね。

さて、ご質問にあった平地歩行と坂道・階段歩行での使う筋肉や
負荷のかかり方などについてお答えします。

まずは坂道歩行から。
上り坂では平地歩行と比較してお尻の筋肉の一つである大殿筋や
ふくらはぎの筋肉である下腿三頭筋(かたいさんとうきん)、すねの筋肉の一つ前脛骨筋(ぜんけいこつきん)という筋肉が強く活動するといわれています。
どのタイミングで活動するかなどは細かい話ですので割愛します。
下り坂では、平地歩行と比較して太ももの前の筋肉である大腿四頭筋が強く働くといわれています。

ー登山のとき、登りで前脛骨筋がつってしまったことがあります…。階段はいかがでしょう?

階段動作のまずは昇段から。
支える側の脚では、お尻の筋肉の大殿筋(だいでんきん)や中殿筋(ちゅうでんきん)、太ももの筋肉の大腿四頭筋(だいたいしとうきん)、
そしてふくらはぎの筋肉の下腿三頭筋の活動が高まるといわれています。
また反対側(この場合足を出す方の浮いているとき)は、すねの筋肉の前脛骨筋の働きが強くなるといわれています。
昇段動作では膝関節と足関節への負担が高まるといわれています。

降段では支える側の脚ではお尻の筋肉の大殿筋や中殿筋、
太ももの筋肉の大腿四頭筋やふくらはぎの筋肉のひとつ腓腹筋(ひふくきん)の活動が高まるといわれています。
反対側の脚では太もも裏のハムストリングスやすねの筋肉の前脛骨筋の活動が高まるといわれています。
降段動作では膝関節の負担が大きいといわれています。

―普段は気づきませんが、長い階段とか急な階段を降りたときに負担を感じます。それにしても、筋肉の名前がたくさん登場しましたね!

そうですね、筋肉の名前がたくさん出てきたので、ややこしくなりました。
理学療法士は動作の専門家といわれています。
実際の勉強では、歩行や階段動作などをいくつかの相にわけて詳しく学習していきます。

―高齢化が進んでいますが、高齢になっても同じような負担なのでしょうか。

一般的なお話ですが階段動作を例に挙げると、まず昇段について高齢者では体幹の前傾(背中が前に曲がっている)が大きくなる傾向にあります。
そのため、股関節により負担がかかることがいわれています。
降段動作では膝関節に負担がかかると先ほど述べましたが、高齢者では膝関節を支える筋肉が弱っていることがあり、
さらに体幹が前傾(身体が前へ曲がっていること)していることで転倒の危険性が高まります。実は降段動作は難易度が高い動作といえます。

ーなるほど。手すりにつかまって、ゆっくり降りないといけませんね。


身体と防災2へ続きます。




参考文献:
「基礎運動学 第6版 補訂」 中村 隆一著
「臨床 歩行分析ワークブック」 武田 功著